私は人魚の歌を聞いた

私は人魚の歌を聞いた 

I 'VE HEARD THE MERMAIDS SINGING

ポリーの素晴らしい感性が感動的! ─林 真理子(作家)
平凡なOLの意外な逆転劇が見れるわよ ─中野 翠(コラムニスト)

1988年3月5日-1988年4月1日

★1987年カンヌ国際映画祭監督週間YOUTH賞

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作品概要

天真爛漫、だけど傷つきやすい心を持った
31歳の“落ちこぼれキャリアウーマン”ポリーの目を通して、
何が真実で、何が偽りだったかを探った
辛辣で、そしてファンタジックな映画です。

ナイーヴな女ともだち
林 真理子さんと中野 翠さんにお話ししていただきました。

ポリーのボスはアート・ギャラリーの女主人。美貌で仕事のデキるガブリエルに憧れるポリーの夢は空を翔ぶ。

林 ポリーってコ、よくいるタイプよね。
中野 そうそう。私も含め、世間の80%の女が共感するところがあると思う。
林 街で出逢ってサエなくて、仕事終わったら家に帰ってテレビ観て寝ちゃうような平凡な生活してるとか。普通だったら映画の主人公になんかなりそうにない女じゃない?
中野 でも本当はこのままじゃいけないって、妙な明るさを持って自分の世界を広げようとしている。
林 ちゃんと自分の世界を持ってて、パーなハイミスなんかじゃない。本物や美しいものの見分け方を知っている。だけど自分ではクリエイトすることが出来なくてそのギャップに苦しんでいる。そこが悲劇よね。
中野 世間では簡単に<普通の女の子>と言ってしまうじゃない? でも、みんな自分では他の人とはちょっと違うと思っている。<普通の女の子>でも、実はいろいろ考えてるんだ! っていう映画なの。

ポリーはある日、ボスを訪ねる若い女性メアリーがガブリエルとセクシャルな関係にあることを目撃してしまう。

林 昔の映画なんか観ると、女の子が窓を開けるときは男の助けがいるわけ。ガール・ミーツ・ボーイで、男に<君はチャーミングだ>なんて言われて新しい世界に飛び出すってのがパターンだった。
中野 でもポリーは男なしで成長しちゃうわけだから、男のヒトが観るとイラ立っちゃうでしょうね。
林 ガブリエルおばさんなんかにしても、さもありなんて感じのレズで、才能と自惚れが強すぎて男なんか要らなくなっちゃってる。
中野 ポリーは、ボスに自分の才能を認めてもらいたくて、趣味でやってる写真をひそかに送りつけるんだけど<薄っぺらだわ>なんていわれて・・・。その時の表情がすごくおかしくて、せつなくて。私にもそういうおぼえあります(笑)。
林 ポリーの幻想シーンも気にいった。妄想狂で、自分がモネの絵にはいっちゃったようになったりとか、おもしろいよね。
中野 いきなりコスチューム・プレイに走ったり、フロイト的言葉をあやつったり。
林 モノクロームでけっこう画面がシャレてました。

監督はカナダ出身の29歳、女性監督パトリシア・ロゼマ。
D・クローネンバーグの『ザ・フライ』の助監督の経験もある。

中野 私が面白いと思ったのは「女と才能」というテーマにして描いていること。今まで、女が男と同じ条件で仕事をするのは大変なことってされてきた来たじゃない?
林 うん。
中野 だから、男と対等に仕事をしている女は、キャリアウーマンのサクセスストーリーとしてもてはやされて来た。でも、この映画ではそんなことは当たり前のことで、その先のことをみつめている。そして、外面的な成功より内面的な成功の方を重要視して描いている。そのあたりに、私はフェミニズムの成熟を感じだわ。
林 こういう映画を1500円支払って観に来るってことは、やっぱりセンスあることだと思うわね。

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スタッフ・キャスト

監督+脚本+製作+編集:パトリシア・ロゼマ
製作:アレクサンドラ・ラフェ
撮影:ダグラス・コウシュ
美術:バレンヌ・リッジウェイ
音楽:マーク・コーヴェン

キャスト:シェイラ・マッカーシー/ポール・バイヤージォン/アン=マリー・マクドナルド/ジョン・エバンス/ブレンダ・カミノ/リチャード・モネット

1987年/カナダ/83分/スタンダード/カラー
原語:英語


配給:ヘラルド・エース/日本ヘラルド映画

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