ドラッグストア・カウボーイ

ドラッグストア・カウボーイ 

DRUGSTORE COWBOY

快楽の限界。

1990年12月22日-1991年3月20日

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作品概要

彼らにとって、時間は、麻薬時間である。自ら作り出した世界の唯一のゴールは、次の麻薬を打つことだけである。そして、麻薬は、砂のように、彼らの身体をすり抜けて行く―無色無臭の死のにおいを持った、現在を生きる彼らの世界―。

’70年代前半。オレゴン州ポートランド。アメリカンドリームの裏の、孤独と喪失に彩られた、都会のブルーな世界―。この街に生息する札付きの麻薬常習者ボブ。妻のダイアンは、ボブを愛しているが、それ以上に麻薬と犯罪を犯すスリルを愛していた。仲間のリックは、ボブの鋭い直感力と、自由で大胆な行動力尊敬し、ドラッグへの渇望から何でもするという、まだ10代の少女ナディーンを恋人として、仲間に引き入れていた。彼等の目的は単純そのもの。薬を手に入れるため薬局を襲う。4人が手を下す仕事は、次々と成功していく。彼らにとって、次の麻薬を打つまでの生気のない単調な日々が続くことが、何よりの悲劇であり、自分達の欲求以外の何物にも無関心であった。そんな日常の中に、私服警官の捜査の手は本格的になってくる。そして、彼らはただヤクを求めて、裏街道へと逃避行を重ねていく―。ある日、ナディーンが大量のディローディドを打った。ボブ達は初めて“死”を目の前にする。そして、彼らの仲間は破局を迎えることになる。しかし、それはボブにドラッグをやめ、生きる事を悟らせることとなった。それが心から愛するダイアンと別れることになろうとも……。
ドラッグの本質と、それ無しでは生きられない状況下に置かれた人々に関して、深いメッセージを持った映画が『ドラッグストア・カウボーイ』である。’89年末、アメリカで公開される以前から非常に評判も高く公開するやいなや、久々の大物監督の出現と共に、映画は絶賛され、大ヒット、ロングランを記録した。次いでヨーロッパに於いてもヒットを続け、いよいよ日本上陸である。
’89年末には、ロサンゼルス映画批評家協会賞最優秀脚本賞を受賞し、作品賞/音楽賞にもノミネートされ、全米映画批評家協会賞最優秀作品賞/監督賞/脚本賞、インディペンデント・スピリット賞主演男優賞/助演男優賞/撮影賞/脚本賞等、各賞を受賞している。
監督は、本作品が長編映画デビュー作となったガス・ヴァン・サント。登場人物達の繊細なまでの心理描写のうまさ、その演技を引き出す手腕と、絶妙のカメラワークに、彼の力量が充分発揮され、緊張感とユーモアが共存しながらも、どこかノスタルジックな印象を感じさせる演出には、じっくりと胸に迫るものがある。現在までに、16本以上の短編を製作しており、’87年には、ウォルト・カーティスの原作を元に製作した『Mala Noche』でロサンゼルス映画批評家賞を受賞している。まさに、ジム・ジャームッシュや、ヴィム・ヴェンダースに続く、新鋭監督として今後の活躍が期待されている大物監督である。製作は『セックスと嘘とビデオテープ』のニック・ウェシュラー。『トゥルー・ストーリー』のカレン・マーフィー。
主役のボブには、『アウトサイダー』『ランブルフィッシュ』、最近公開された『カンザス』等、演技力に磨きがかかったマット・ディロンがドラッグ・カルチャーに生きる若者を見事に演じている。彼の一人称で始まるストーリーの、その語り口は、街で息づく者達の声、真実の姿を感じさせる。ボブの妻役に、『再会の街/ブライトライツ・ビッグシティ』『カクテル』のケリー・リンチ。仲間のリックをジェームズ・レ・グロス。彼らを追う刑事を『48時間』のジェームズ・レマーと、それぞれ個性的な演技で映画をいっそう表情豊かなものにしている。
ウィリアム・バロウズを、監督のヴァン・サントは「最も刺激を受け、影響を受け続けてきた人物」という。バロウズは、「裸のランチ」等、アメリカン・ビートの文学者として有名である以上に、アート、音楽、映像と、多方面に偉大なる影響力を与え続けるアーティストであり、サブ・カルチャーを語る上でかかせない中心的重要人物である。おもしろいことに『ドラッグストア・カウボーイ』の中ではヤクで聖職を失った牧師役で出演している。物語の行く末を暗示するような、バロウズのモノトーンの感情、青ざめた顔が、静寂したメッセージを我々に語りかけるようで、印象深い。

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スタッフ・キャスト

監督:ガス・ヴァン・サント
製作総指揮:キャリー・ブロカウ
製作:ニック・ウェシュラー/カレン・マーフィ
脚本:ガス・ヴァン・サント/ダン・ヨスト
原作:ジェームス・フォーグル
音楽:エリオット・ゴールデンソール
撮影:ロバート・ヨーマン

キャスト:マット・ディロン/ケリー・リンチ/ジェームス・レマー/ジェームス・レ・グロス/ヘザー・グラハム/ウィリアム・S・バロウズ(特別出演)

1989年/アメリカ/カラー/ビスタ/100分/ウルトラステレオ
原語:英語
字幕:石田泰子

提供:株式会社アポロン
配給協力:ヒューマックス・ピクチャーズ
配給:GAGA

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