野性の夜に

野性の夜に 

LES NUITS FAUVES

愛しているのに 愛せない
愛しているから 愛せない

1993年6月12日-1993年10月29日

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作品概要

エイズの時代を生き急いだ若者が遺した2時間6分の命

かいせつ
シリル・コラールに捧げられた、第18回セザール賞
◆1993年3月5日、一人の若者の死がフランス中を悲しみに震わせた。
「“息せき切って駆け抜けた人生”永遠に続くかにみえるエイズの犠牲者リストにシリル・コラールの名が新たに加わった。『野性の夜に』は愛と性を漂流する世代を代弁した映画だ。」(ル・モンド紙)
「“死に至る愛”エルヴェ・ギヴェールが自らの死を小説にしたのなら、シリル・コラールは自らの命を映画にしたのである。(ル・フィガロ紙)
「『野性の夜に』によって“野性の天使”シリルは最後の闘いに勝った。彼の芸術的遺言は命の叫び、愛の叫びであると同時に恐怖の叫びでもあるのだ。」(フランス・ソワール紙)
◆35歳の若さでエイズに倒れたシリル・コラールはこの自伝的映画を監督、主演。エイズに侵されながらも、愛すること、生きることの素晴らしさを鮮烈な描ききった。
◆“生の賛歌”であり“愛の賛歌”である本作品は昨秋パリで公開されるや、若者たちに熱狂的に支持され、現在もロングラン中。そして監督の死の3日後に行われた第18回セザール賞(フランスのアカデミー賞)では作品賞・新人監作品督賞・新人女優賞・編集賞と主要4部門で受賞し、今年の授賞式は“シリルに捧げる夜”となった。
◆大方の予想通り、見事に最優秀新人女優賞を受賞したロマーヌ・ボーランジェは涙をこらえ「シリル、『野性の夜に』は私に力と命を与えてくれたわ。永遠に私の心に生き続けるでしょう。あなたをがっかりさせないよう、いつまでも私を誇りに思ってもらえるように頑張ります」とスピーチし、会場やテレビの前の大勢の人たちの胸を打った。

生きるというこは愛すること
愛は死を超えられるか? 『野性の夜に』は愛することを知らなかった30歳のジャンが、純粋に愛を求める17歳の少女ローラの前で、エイズ=死の恐怖を生きるエネルギーに変え、愛することに目覚めていく物語である。生きてことの喜びと苦悩の重みをシリル・コラールは映画を通して観客の心に直球で投げ込んでくる。
◆エイズ・キャリアの監督が自伝的映画を撮っているにもかかわらず、この作品には絶望的な暗さが皆無である。シリル・コラールは未来に向かって全速力で走っていた。

シリル・コラールとロマーヌ・ボーランジェの衝撃的なスクリーン・デビュー!
◆監督、主演のシリル・コラールは彗星のように現れ、最後の輝きをスクリーンに刻みつけ、セザールの作品賞と新人監督作品賞を天国で手にした。そして悲しいことに、日本では遺作によるデビューとなった。
◆シリルは小説家であり、作詞作曲をする歌手でもある。本作品は彼の2作目の同名小説を映画化したもので、シリルは監督、原作、脚本、音楽そして主演もこなしている。多くの才能に恵まれた彼はまったく新しいタイプの映画監督で、映画青年ではなかったために過去の映画群の奴隷にならずに自由な映画作りをしている。
◆セザールの新人女優賞を手にしたロマーヌ・ボーランジェはフランスの名優リシャール・ボーランジェの長女。本作品における彼女の演技は、演技の枠を超えてローラをそこに存在させてしまっている。彼女にデビューは新しいスーパースターを待望するヨーロッパ中のマスコミを熱狂させ、わずか2ヵ月のうちに1800もの記事が掲載された。

躍動する映像、真実の息吹
◆『野性の夜に』の一番の魅力は映画が息づいていることだ。つまり、カメラが役者たちを生々しく追いかけ、役者が演技を超えて真実を生きる瞬間を見事に捕える。そして荒々しいほどのスピード感溢れる編集。すべてのシーンに無駄がなく、ぐんぐんテンションは上がっていき、10分に1回ハートに突き刺さる映像や台詞を送り込んでくる。そして映画は型を破り、リズミカルに躍動し始める。

ものがたり
◆1986年パリ─まだエイズに対する認識が低かった頃。30歳のジャン(シリル・コラール)はバイセクシャルで、エイズ・キャリア。愛することを知らない男だ。ある日、彼は17歳の純粋な少女ローラ(ロマーヌ・ボーランジェ)に出合い恋に落ちる。ひたむきな彼女の前に彼はエイズ・キャリアであることを告白できないまま、ベッドを共にしてしまう。
◆後になって事実を知らされたローラはパニックに陥るが、彼を愛することをやめない。まるで“愛は死を超える”と信じるかのように。一方ジャンは迫りくる死の恐怖をごまかすように、夜な夜な男漁りをくりかえし、男の恋人サミー(カルロス・ロペス)とローラの間を行き来する。ひたむきに愛を求めるローラにどう応えていいのか分からないジャン。ローラは憔悴しきって神経衰弱状態に陥り、ジャンの元を去る。
◆独り旅立つジャン。ローラとの出会いエイズ=死の恐怖によって、はじめて彼は人を愛することや、生きていることの素晴らしさを学び、心から「ジュテーム:愛している」とローラに告げる。

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スタッフ・キャスト

監督+脚本+原作「野生の夜に」:シリル・コラール
共同脚色:ジャック・フィエスキ
演出助手:コリーヌ・ブルー
撮影:マヌエル・テラン
編集:リーズ・ボーリウ
製作総指揮:ジャン=フレデリック・サミー
製作:ネラ・バンフィ

キャスト:シリル・コラール/ロマーヌ・ボーランジェ/カルロス・ロペス/コリーヌ・ブルー/クロード・ウィンター/ルネ=マルク・ビニ

1992年/フランス/126分/カラー/ヴィスタ/ドルビーステレオ
原語:フランス語
字幕:寺尾次郎

原作「野生の夜に」: 二見書房刊
サウンドトラック:日本フォノグラム

配給:ユーロスペース

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