シクロ

シクロ 

Cyclo

残酷な愛、無垢なる死。

1996年8月3日-1996年10月11日

★ヴェネチア国際映画祭グランプリ受賞

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作品概要

〈シクロ〉は〈詩人〉の危険な世界に憧れた。
〈姉〉は〈詩人〉に恋をした。
〈詩人〉はふたりの純粋さに嫉妬した。
3人の感情はもつれあい、それぞれがお互いの心に傷を負ってゆく…。

“光と色のカオス”が観る者の五感を刺激する…。

●1995年9月9日、ヴェネチア国際映画祭で、トラン・アン・ユン監督の『シクロ』は堂々のグランプリを獲得。光と影、独自の空間の美学を展開させた鮮烈なデビュー作『青いパパイヤの香り』につぐ待望の長編第二作目である。今でもフランス植民支配の影響が色濃く残り、プチ・パリと呼ばれるホーチミンで、今回は4か月にも及ぶ現地ロケを敢行し、現代ベトナムの社会脈動とそこに生きる人々の息吹を迫力に満ちた映像としてフィルムに刻み込んだ。
シクロ(輪タク)を生活の糧とするひとりの若者〈シクロ〉を演じるのは、数百人の候補者から選ばれた新星レ・ヴァン・ロック。「彼は動物のような物凄い存在感を持っている」と監督は彼を絶賛している。そして社会の深淵に生きる虚無的な青年〈詩人〉に扮するのが、『非情城市』『恋する惑星』など香港映画界でも注目の演技派、トニー・レオン。彼自身、本作が自分の重要なターニング・ポイントになるだろうと語る。また〈シクロ〉の〈姉〉を演じるのが『青いパパイヤの香り』のヒロイン、ムイ役で匂いたつような魅力を発揮したトラン・ヌー・イェン・ケー。優雅で優しく、忍耐強い女性と言うキャラクターに加え、破滅的な愛に命を捧げる女という新側面も披露する。
●製作のクリストフ・ロシニョンは、ユン監督や、『憎しみ』のマチュー・カソヴィッツら新進気鋭の監督を養成した、今や世界中の注目を集める敏腕プロデューサー。撮影のブノワ・ドゥロムの細やかなディティール描写に加えて、流れるようなカメラワークが捉えた現実を映し出す激しい動き。音楽のトン・タ・ティエは、ベトナム音楽の特徴を取り入れ、登場人物の揺れ動く魂を見事に表現した。

人々の中に共存する“純粋さ”と“残酷さ”  ─監督:トラン・アン・ユン

【シクロ】
“シクロ”というのは、この映画では“青年本人”とその“青年の仕事道具”(人力車)の両方をさしているわけですが、その〈シクロ〉が映画の進行役となるのは、自然なことでした。なぜなら、〈シクロ〉は常に動いているからです。〈シクロ〉を通して私は仕事の世界、疲れ、汗、食べ物、金のことを語れると思ったのです。このベトナムという具体的な社会の中にテーマの根を張ることが、私にはどうしても必要でした。

【詩人】
私は〈シクロ〉よりも“分析的”な人間として、〈詩人〉を登場させました。〈詩人〉の視線は説明的でなく、謎めいているからです。〈シクロ〉と〈詩人〉を結びつけているもの、それは“純粋さ”といえます。〈詩人〉は凡俗と貧窮から逃れるために、犯罪の道を選んで純粋さを失っているわけですから、〈シクロ〉の持つ純粋さに惹かれるのです。そして、〈シクロ〉を救い出す力がありながら、むしろ試練を課すのです。

【姉】
〈詩人〉は、〈シクロ〉と〈姉〉が姉弟だということを知らずに、〈姉〉に対しても同様に対処します。辱める客の相手をして涙する〈姉〉の泣き声を聞いて苦痛と慰めを感じたくて、〈姉〉に売春をさせます。〈姉〉の涙は〈詩人〉にとって、仕事における“純粋さ”の表れです。〈詩人〉は、〈姉〉が客の家から朗らかに出てくるのを見たり、〈シクロ〉がヤクザの一味に加わりたいと言うのを聞いて絶望にかられます。
私は、そうした暴力の一部始終を、人間のあたたかい目で見せたかったのです。

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スタッフ・キャスト

監督+脚本:トラン・アン・ユン
台詞:グエン・チュン・ビン/トラン・アン・ユン
音楽:トン・タ・ティエ
製作:クリストフ・ロシニョン
撮影:ブノア・デュロム

キャスト:レ・ヴァン・ロック
トニー・レオン/トラン・ヌー・イェン・グエン・ヌ・キン/グエン・・ホアン・キン

1995年/フランス・香港・ベトナム合作/ヴィスタ/ドルビーステレオデジタル/128分/カラー

オリジナル・サントラ盤:BMGビクター

提供:パイオニアLDC
配給:パイオニアLDC/メディアボックス/シネセゾン

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